Teen&Adult〜Now〜
※2014年発行の合同誌「Teen&Adult」「Teen&Adult2」収録、大学生青峰×高級デリヘル勤めの黄瀬(年下×年上)のお話がベースです。エッチの時は黄瀬が青峰を「大輝くん」呼びしてます。ご存知無くても読んで頂けるようになっておりますが、先述のような特殊設定パラレルですのでご注意ください。
とあるホテルの一室、切ない悲鳴が響き渡る。
「ひ、ぃ、やあも、だめ、だめだめ、あああああやあああ、だいきくんやだ、やだやだぁうううう、」
ほとんど泣きじゃくるようなその声は、けれど確かな甘さと期待に濡れていて、青峰の昂奮を激しく煽った。 黄瀬はぐすぐす鼻を鳴らしながら青峰の手を押しとどめようとするが、青峰はそれを許さない。開いた白い太ももを膝で押さえつけ、先ほど射精を迎えたばかりで淫らに濡れそぼった黄瀬のペニスの先を、ひたすらに撫で擦る。 普通の男からしたら拷問のような――いや、これは確かに拷問だろう。
「ヤダ? ホントに?」
敏感になった剥き出しの粘膜を強引に、容赦なく。
「ぅうう、ン、んぅ、ぁ、っち、ちが、ちぁ、ぅ、ンンっ」 「辛いけどイイんだろ。すッげェかわいい顔してるし」
極みへと追い立てる。
「んっんっ、ぃ、い、きもち、ぁあでもも、やだよぅ、だいきく、おれ、こわ、こわれちゃうっす……っ、」 「まだまだ」
意地悪く青峰が笑うのを見て、黄瀬のうるんだ琥珀の瞳は困惑と絶望に一瞬見開かれた。 が、同時に口元はだらしなくゆるんでいる。 震えてまともに言葉も継げない、幼子のような年上の美しい男を前に、青峰は思い出す。
★
「あ、あのっ、大輝くん!?」 「んあ? 何だよ」 「これ、なんかおかしくないっスか? 俺、俺がサービスするって言った気がっ……!」 「んー? うん。だからまた黄瀬のイくトコ見てえ」 「うぇ、えっ、あっ、ま――」
まだ黄瀬が高級デリバリーヘルスのキャストで、青峰がその客だった頃。 奥手ではあっても好奇心旺盛な青峰は、黄瀬と逢瀬を重ねるたびに性の秘密をひとつ、またひとつと手にしていった。
――『今晩はもちょっとだけサービスさせて。俺のオゴリだから』
あの日、黄瀬は青峰のほんのささいな一言に機嫌を良くし、別れの時間を少しだけ延ばせるかと尋ねてきた。 青峰が喜んでOKしたのは言うまでも無い。しばらくは風呂上がりの体を黄瀬のやわらかな愛撫に任せていた。 仰向けに転がる褐色の体に、半分ほど乗り上げるようにして密着する黄瀬の裸体。その重みとぬくもりは眠気さえ誘う。そこへ甘えるようなくちづけと共に先ほどよりは若干勢いを失った性器をやさしく扱かれれば、夢とも現ともつかぬほど心地良い。 しかし自身もほのかに昂奮した様子でありながらもそれをこらえつつ奉仕する黄瀬の色っぽさと愛らしさは、そんなゆるゆるとした空気を蹴散らすほどに青峰を昂ぶらせた。 意外にも普段は波間を漂うクラゲのごとく自由気ままで受け身だと友人に評されるが、ひとたび覚醒してターゲットを絞ったが最後、確実に獲物を仕留める猛獣と化す青峰である。あっという間に黄瀬を組み敷き、彼を攻め立て始めたのだった。
「さっきはちょっとしか出なかったし、まだ溜まってんじゃねーの? それともアレか? ……チンコはあんま気持ち良くねーとか?」
この日、青峰は黄瀬の自慰を見せてもらった。主に肛門と乳首をいじる自慰。黄瀬は時折不安げに青峰を見つめて謝罪しつつも、羞恥に喘ぎ、快感に鳴いた。ただ射精は、青峰が黄瀬の性器へ自分の性器を押し付けて触ることでようやっとという感じだった。 だから青峰は興味が湧いたというか――ある意味心配になったのだ。男性としての絶頂をちゃんと黄瀬が迎え、気持ち良い、すっきりした、と思えているのかどうか。 いくら金を払ってサービスしてもらっているとは言え、我慢は良くない。一方的なのはイヤだ。 やるならなんでも対等に、という単純明快、どこでもどんな相手でも適応される青峰のモットーは、ここでもやはり健在だった。
「きもちいっスよちゃんと! で、でもおれ、ああ待って、っだ、だい、くん、――っぅう! ――……く、――は、」 「――え、はえェ……」 「う……」 「あ、悪い」
ついつい己のものを弄るのと同じような調子で扱いていたら、黄瀬にとっては強かったのかすぐに射精してしまった。
「じ、じぶんでやる時は、こんな早くないんス……。でも、だい――いや、だれかにさわられるの、ほんと、弱くて……。すぐイくし、潮吹いちゃうし……」 「シオ……?」
ぱちくりと切れ長の目を瞬かせる青峰。 それに対して一瞬同じくきょとんとした顔をしてから、ああしまったと気まずそうにうつむく黄瀬。
「ええと……大輝くん、AVとかは見るっスよね……?」 「おう!?」
しばらくの沈黙の後、繰り出された突然の質問に、青峰は頓狂な声を上げた。 実はこの頃とっくに黄瀬への想いは実っており、グラビアやネットのアダルトコンテンツよりも黄瀬を組み敷く妄想で自慰をするようになっていたのだが、残念なことに自覚はまったくしていなかった。 だから青峰は黄瀬の問いに対して「お前で抜いている」とは言えず、「まあ、見る」と答えた。
「っスよね。じゃあ、女の子の潮吹き、見たことあると思うんスけど……」 「潮吹き……って、あの、なんかビシャビシャ水みたいなん出るヤツ?」 「そっス」 「あるけど……、あれってションベンなの? いやでも透明だしめっちゃ出てるし……なんなんだ? オレ結構ナゾに思ってたんだけど」
眉をひそめて純粋に訊く青峰に、黄瀬は頬に手をあてて熱っぽい溜め息を吐いた。
「やっぱり大輝くんはかわいいっス……」 「……子供扱いすんなよ」 「あ、違う! 違うっス! そうじゃなく。……こんなにカッコイイのに遊び慣れていないところが素敵で……すごく、ドキドキしちゃう……」
黄瀬の手に導かれ、青峰はなめらかな白い胸にてのひらを置いた。 なるほど、確かに鼓動が速い。つられて青峰の胸も激しく鳴り出す。
「……黄瀬」 「ぁ――うん?」 「で? お前はそれができるって? どっから出んの? チンコから?」 「ひゃっ!」
まだ達したばかりの性器の先端を青峰が悪戯じみた動きで撫でると、黄瀬はびくんと腰を引いて身をちぢこめた。それがおもしろくて更にくりくりと亀頭を指の腹でもてあそぶ。
「ダメっス! それダメ……! え、なんで? 大輝くん知ってるんスか?」 「知ってるって、何が?」 「それ続けられると、ほんと出ちゃうからっ……!」 「よーし。いいこと聞いたぜ」 「ええっ!? あ、嘘! 今のは嘘っス!」
少し前から気付いていたが、黄瀬は見た目とは裏腹におっちょこちょいというか、お頭が若干弱かった。 実際に年上ではあるし、経験豊富なのも事実ではあるけれど――こういう時には微笑ましいほどに子供っぽい。 それが自分の前でだけの特別な姿だと青峰が知るのは、もう少し先のことだ。
「サービスしてくれんだろ? な、どうしたら出んの? オレ見てェな。黄瀬がソレ出すトコ」 「――ぁう、うぅう、だいき、くん……」
無事陥落。黄瀬は青峰に自らをなぶる方法を教えてくれた。 青峰は言われた通り黄瀬が泣いても叫んでも性器を刺激し続けた。最初はやっているこちらが顔をしかめてしまうほどだった。つらい、いたい、くるしい――厭だ厭だと首を振って逃げようとする黄瀬を押さえつけるのは、いくらなんでも気が引けた。だが青峰が手をゆるめると、今度は黄瀬の方が手を動かした。一人歯を食いしばって真っ赤になったペニスを扱く。そうすると今度はそれが可哀想で、また青峰の手が伸びる。 そんなことを繰り返すうちに黄瀬の反応が変わってくる。むずがゆいと腰を揺らめかせて、切なげに眉を寄せキスをねだる。額に汗を浮かべ、うーうーと子供のようにぐずる姿は、今まであまり見たことのないものだった。青峰は咽喉を鳴らして体のあちこちに噛み付いた。金の髪を掻き混ぜて、ぶつかるようなキスをした。くちゅくちゅくちゅくちゅと手の中から水音がする。耳元で黄瀬の甘い泣き声が響く。「だいきくん、だいきくん」と呼ぶ声がする。 ――何度も何度も噴き上げた液体はやはり透明でさらさらしていた。黄瀬の顔まで飛ぶほどの勢いだった。 全身をぐっしょりと濡らした黄瀬が白いシーツの上で脚を開いたまま放心している様を見て、青峰は腹の底から突き上げるような――凶暴なまでの性衝動に襲われるのを感じていた。
★
「はぁっ、は、ぁ――う――、」
弛緩した体を抱く。いくら貫いても形の崩れることの無い蕾が、この直後はふと開くのを青峰は良く知っていた。
「んんぅ! あ……ぁあ……だい、きく……」 「黄瀬、きもちーか?」 「ぁん、ン、きもち、ス、ぁっ、」
突き上げながら再び性器を握ると、名残惜しげにまた飛沫が上がる。 黄瀬の瞳からも律動のたび、透明な雫が転がり落ちた。
「だいきく……だいきくん、好き、スキっす……きもちい……もっときて……おく、もっと欲しい……」
どこか涼しげで寂しげだった仮面はあの頃に置いてきた。今青峰の前にいるのは人なつこく甘えん坊な普通の男だ。
「任せとけ。言われるまでもなく、た〜っぷり可愛がってやっからよ」 「うん……うん」
何度も裸を見せ合って、何度も体を触れ合わせて、だけど叶わなかったたったひとつの最後の砦。 自分を包み込む黄瀬のあたたかさ、全力の信頼でもって身を開いてくれる無防備さを感じながら、青峰は笑う。 ああずっと、ずっとこうしたかったんだな、と笑う。
「大輝くん……? どしたんスか……?」 「んにゃ。なんでもねーよ」 「ぇへへ……」 「なんだよ。お前こそどした」 「夢みたいっス」 「何がだ?」 「大輝くんと、こういう風に、できるコト」 「オオゲサだろ」 「だって俺――ずっとこうして欲しかった」
――両想いとはまさに現在(いま)を言うのだと、できることなら世界中のみんなに教えてやりたい。 青峰は黄瀬にとびきりのキスを送りながら、目を細めた。
20160328
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