limitary loop
這いずって逃げようとするのをたまにじっと見ていたくなる。 それは決して残酷な気持ちではなくて、いやそうなのかもしれないけど、多分なまぬるいループを味わっていたくて、ただ延々てのひらで転がして愉しんでいたくて。
続かないと識っている。だからこそ。
「こら、戻れ」 「あ、わっ・・・!」
のめる上半身に後ろからのしかかって手首を掴みシーツに縫いとめて、勢いのままくびすじに歯を立てた。 明るい色に染めた髪の下の白い白い肌。のぼる血の赤。 昂ぶりを尻のあたりに押し付けると、陽介は間抜けな悲鳴を上げてくしゃりと手折れた。 おろしたての夏服のシャツがそのごわついた体で二人を阻もうとするので、引き剥いで打ち捨てる。
「月森?」 「口、開いて」 「―ぅあ、ん、ん、」
俺が時折こぼしてしまう乱暴な仕草やむき出しの言葉に、陽介はいつも過剰なほどに反応する。 怯えと期待と、どうしたらいいのか、どうしてほしいのか、あんまり無い脳味噌で必死に考えるようなそんな顔をする。 そうすると少し申し訳なくなると同時、すごく色んなことがしたくなる。 予測もつかない、でも彼が求めてること。 前触れも無く。彼の思考を真っ白に塗りつぶすほどに。
「な、なんでっ、さわって・・・ねぇんだよぉっ・・・!」 「え?なんか言った?」
そのわりにはいじめて焦らして泣かせてしまうのは何故なのかって。自分でも不思議だ。 ・・・嘘、不思議なんかじゃない。答えはよくよくわかってる。
「おおむね、陽介がかわいいのが悪いんだな」 「っ、な、なんだよ急にっ!お前はいっつも突然、」 「いや俺の中では繋がってるんだけど」 「俺ン中で繋がんねえのお!」
陽介はまたもや足にズボンが絡まったまんまの情けない格好で逃走を試みた。 結果はさっきと同じこと。
逃げますか? ×NO ×いいえ
「うん。逃げられない」 「いーやーだーっ!」 「いやなの?」 「えっ?いやっ、いや、え?」 「俺のこと厭なの」 「や、やって、そういうイヤじゃ、」 「じゃあオッケーな」 「いぎゃー!」
続かないと知ってしまった。だからこそ。
「陽介、おいで」 「・・・・・・ん」
あとは性急に求め合う。陽介は我慢が苦手で、かと思いきやすごく我慢強い。 このままじゃれてぐるぐる回るのもいいけど、それじゃあまりにも物足りない。 なにせ時間は有限で、俺はあまりにも陽介のことが好きだった。
ずっと、すごく好きだった。
END 20090218
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