Your Love Song(小十郎×政宗 ) ※死ネタ注意



此処はとても静かだ
すべてが凪いでいる
俺のからだの中の細い血流の音はまるで木の葉のざわめきのように。
溜まる血潮は最早俺の皮膚よりあたたかい。

穏やかだ
なにかが啼いている
俺のからだは土に呼ばれ、間もなくほどけていくだろう。
ぬくもりはこの空気と粒子の中に。

触れる指先
願いは叶えられなかったけれど
隣にはいつもお前が。

霞む視界の中、もうどんな顔をしているのか見えない。
俺は笑っているだろうか?それとも泣いているか。

握るてのひら
あの頃と変わらずに

忘れない
お前のこと


また会おう


この果敢ない人生に



お前がいて ほんとうに よかった





060910












元就&元親

もう二人とも体力の限界だったが、どちらかというと勢い任せの力に押されて元就が僅かずつ後退しているように見えた。けれど元親も、もう本当に動けない。振り回した碇槍の重さに体が一瞬泳ぐ。
「…っちィ!」
「…………」
ごうごうと音がする。
海鳴りのような、嵐のような音だ。
それが自分の心臓と、そこから送られる血の流れと、そして止まない荒い息の音だと気付いた。
「…どうした…殺るなら殺れよ。俺の負けだ。」
「…貴様はそれで良いのか。」
「良くねえよ。いいわきゃねえだろうが。俺には俺を慕ってくれる奴が沢山いるんだ。」
「下らぬな。」
「ああそうかもな。―なあ、お前さんはよォ、俺を殺したら笑うのかい?」
元就の、らしくも無く戦いで汚れた面が歪む。手にした輪刀の刃がぶつり、眼前にへばりこんでいる鬼の白い肌へ食い込んだ。
「お前が俺を殺して、勝って仲間と喜び合って、それで笑うんだったらそれで良いさ。」
彼はそうやって、ずいぶんと綺麗に笑った。
殺してやると元就は思った。こんなに人を殺してやりたいと思ったことは無い。同時にこんなに失くしたくないと思ったことも無い。


060916











わんわんにゃーにゃー幸村&政宗

幸村と喧嘩をした。
俺は水浴びはあまり好きじゃないのに川まで引きずられていって深いところに放り投げられた。最悪だ!それで幸村はずぶぬれになって耳も尻尾もぺしゃんこになった俺を見て笑いながら可愛い、などとのたまった。あんな奴しるもんか。本当にいらいらする。今日は暑いから余計に。とにかく、もう顔もみたくない。絶対ここなら見つからないだろうからと以前散歩中に見つけた廃屋―の梁の上で俺は寝そべった。

「―まさむねどの…」
…なのになんで見つけるんだこいつは。ますます気に入らない。ここは俺だけの場所なのに。申し訳ござらん、某、ついはしゃいでしまって。とくんくん鼻を鳴らす音。顔だけのぞかせて下を見ると、きゅっと身をちぢこめて正座している幸村の姿が見えた。(ちなみに顔は傷だらけである。俺が自慢の爪で思う存分ひっかいてやったのだ。)
「俺は怒ってるんだ!」
高らかに宣言してやる。幸村は大きな目を見開いて本当に悲しそうに肩をすくめた。
「大体なんで来るんだよ。この場所は俺しか知らねえはずだ。」
「すっ、すみませぬ…でもその、においが…。」
「におい?」
「はい!某、政宗殿のにおいならどんな遠くでもわかる故!」
俺は不意のその言葉にびっくりして飛び降りて幸村に頭突きを一発かましてしまった。幸村はひっくり返りそうになりながら俺に抱きついた。しばらく取っ組み合いのような抱擁が続いた。それから二人で仲直りの品だという桃を手も口も汁まみれにしながら食べて、お互いの体についたそれを夢中で舐めあった。気付いたらいらいらはどこかへ行っていて、こいつといるといつもこうなんだと笑った。あとは眠くなったから覚えてない。


060919











幸村×政宗

そばにいると息がしづらいのだ。政宗は誰の目にも留まらぬように背を向け顔を伏せて、その鋭い眼差しとは裏腹な弱々しい笑みでそうこぼした。幸村は何ら驚くような様子もなくただ凛とした曇りの無い双瞳で丸まってしまった政宗の背を見つめている。
大きすぎる炎はその熱風で寄る者の肺を焼く、だから―
「だから、何だというのですか。」
「俺のそばによるな。」
「聞けませぬ。」
「よるな。」
視力を奪う鮮烈な光にさえ似た漆黒の空。
其れを裂いたあの日の炎がすべてを奪ってしまった。
「息ができない。」
「政宗殿。」
「お前のせいだ。」
「………」
「こんなに熱くてくるしくて死んでしまいそうなのに、」
どうして飛び込みたくなるのだろう。
振り返った先に座っている幸村はただ端座したまま手を差し伸べていて、政宗は結局そこにたどり着いてしまう。これから先、ずっと、何度だってそうなのだろう。


060925











佐助×政宗

はためく陣羽織はまだ水分を含んでいるせいでいつもの群青よりは一段鮮やかさを落とした藍に近い色をしていた。ばたばたと重そうに風を受けるそれを見ながら俺は溜息を吐く。なんでこんなところに居合わせてしまったのだか。伊達の殿様は山奥の泉で呑気に水浴び中。絶世の美女の(もしくは絶妙な肢体のあのくのいちの)ものならば多少は嬉しかったし癒されただろうに。しかも丸腰の俺をいきなり攻撃するなんていくら忍でもあの熱血正義真田隊のモンがそんな野暮なこたあしねえよな?などと牽制されてしまってはどうにもならない。(しかもそう言っておきながら下帯に懐刀をしっかり潜ませているのを俺は知っているんだよ!)(俺だって今日はやりあうつもりなんて毛頭ない!)で、なぜかこうして世間話に至るってなんかこれおかしいよねホント。でももっとおかしいのは俺がいつまでもこの陣羽織が乾かなきゃいいって思ってることさ。だって乾くまでは竜の旦那もここにいるから。


060926